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終わりの始まり③ [記憶のカケラ。]

そうこうするうちに両替所が開いて、いくばくかのUSドルをGuatemalaの通貨 「ケツァル」に換金。

しかし・・・全く通貨価値がわからん。

たった一人、同じ飛行機に乗っていたらしい日本人を見かけ、つい話しかけてしまったけれど、旅慣れた相手の様子はなんかこう、「毛並みが違う」感じ。

このままその町(グァテマラシティ)に残るという彼に、

「そう、私はアンティグアに行くから。またどこかで。」

とまるで自分の言葉じゃないような無機質な言葉が口をついてでてしまった。


「え?私これからアンティグアに行くの?」


自分で確かにそう言った・・・。それぞれの方向に分かれ歩き始めてもまだ茫然自失、自分の言葉が信じられなかった。口が勝手に動いただけ。心は全く別のところにあった。

もはや自分は自分ではないのかもしれない。

信じがたい騒音と雑踏の中、なんとかバス停を探し当て、アンティグア行きマイクロバスに乗るため、料金交渉。
バックパックを屋根に載せろと言われたけれど、荷物から手を離せば二度と戻ってこないと本能的に感じ

「やだ。」

と、なおも食い下がるおやじを尻目にさっさと乗り込んだ。

見た目どおり、いやそれ以上の・・・おんぼろ。

まず、サイドミラーが両方ともない。シートはやぶれ、ガソリンと体臭、生活とホコリの匂い。あきらかに観光客用ではない。

膝にバックパックをのせて、窓際に身を寄せていると、どっこいしょとインディヘナ(原住民)のおばちゃんが隣に座ってきた。わたしの荷物を見るやいなや

「それ、屋根にのせなさいよ!」

とそんな風なことをスペイン語で毒づく。いやいや、わたし、どっちにしても一人分の席でおさまってるから。そっちこそおっきいお尻で二人分の場所とってるじゃん(ちなみに二人掛けシートに大人3人がぎゅうぎゅうに詰め込まれ、もちろん通路もぎゅうぎゅう。乗車率200%)。こちらも日本語で応戦。しかもおばちゃん、膝にグァテマラ特有の織布にくるまれた大きな包みを抱えている。ふん、荷物の多さは一緒じゃん、と思いつつ何気なくその包みが目に入る。・・・ん?もぞもぞ動いとる?

・・・茶色い・・・にわとり・・・だ。

しかもとびきりフレッシュ。クェッココと小さく頭を振っている。


ああ、そう。そうなんだ・・・


今思えば私の中の何かが「グァテマラ」を認識した瞬間だったのかもしれない。

ふぅ、と自分でも意味不明のため息をつき、まだ文句がありそうなおばちゃんを無視して、わたしは窓の外に目を向けた。

そして、これ以上は無理というくらい人も鶏も、見たことのない何かも、まとめて積み込んだマイクロバスは、ざりざりとようやく動き始めた。




終わりの始まり④へつづく。。。
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