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終わりの始まり⑤ [記憶のカケラ。]

舗装した道路に慣れてしまっている身には、延々と続く穴ぼこだらけの土の道はちょっとしたアトラクションです。

体が上下左右に激しく揺さぶられる中、となりの鶏は寝てしまったのか静かになっていました。

1時間ほど揺られ、細い道を入り何度か左右に折れたあと、
どうやら目的地のアンティグアについたようでした。

そこはバスターミナルとは名ばかりの市場の片隅。そしてぬかるみ。
降ろされたはいいけれど、本当にそこが「アンティグア」なのかどうかすら疑問でした。文字の存在しない世界に迷い込んだような不思議な感覚。

あたりを見回しても、町の案内板はおろか看板、いやそもそもバス停すらないのですから。


最後に機内食を食べてから何時間たったっけ、、、


空腹と疲れと、打撲痛(機内で荷物を上にあげようとして気づいたのですが、両腕が肩より上に上がらない・・・)、考えてみると丸二日顔すら洗ってないし、ヨレヨレぎとぎと不機嫌全開のモモキチ。

「ガイドはいらない?ホテルは?」

と群がる子供たちをかき分けるように進むと、ハーメルンの笛吹にでもなったかのように子供たちがついてきます。
無理もない、今のバスに乗っていたよそ者はどう見ても私ひとりだったから。みんな客である私の気をひこうと必死なんだ。

立ち止まってみんなに向かって

「い・ら・な・い」

と子供を食らう鬼のような形相で言ってみたけれど、むしろ面白がらせただけのようで。

それでもやがて、一人減り二人減り…やがて少年が一人残りました。

どこまでついてくるの?着ているものはひどく汚れていてぼろぼろ、爪の間も真っ黒で・・・はだし。

この子たちは今日を生きるために仕事をしてるんだってことくらい、私にもわかりました。


「仕方ないなぁ、そのガッツに免じてガイド頼むわ。」


と地球の歩き方に載っているホテルの名前を見せて言うと、その少年は頷いて大きな黒い瞳をキラキラさせました。

でもね、この時はまだ知らなかったんです。
彼に文字は読めないってこと。




終わりの始まり⑥へつづく。。。





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