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終わりの始まり⑥ [記憶のカケラ。]

その少年は勢いよく歩きだし、こっちだこっちだと私をせかします。

せかされるのは好きじゃない。

モモキチの不機嫌バロメーターがぎゅぎゅいーんと上昇する中、しばらく歩いたのち「ここだ」と彼は振り返りました。

・・・ここ、普通の家じゃん。

とりあえず一歩入る・・・そこは6畳くらいの部屋で、かなり使い込んだソファーと、カウンターとおぼしき机があります。

ものめずらしげにぐるり眺めまわしていると、いつの間にか目の前に、50歳くらいの男性が満面の笑みをたたえて立っていました。そして英語でこう言うのです。

「ここはスペイン語学校です」

と。

「・・・はぁ?」


すでにさきほどの少年の姿はなく、その瞬間「やられた・・・」と気づきました。そうです。はなっから指定のホテルに案内するつもりなんてない、この学校の客引きだったんです。

異常に沈み込むソファーに思わず座り込み、脱力。

笑い顔の男性はなおも続けて料金説明などをしています。

・・・怒ったってしょうがない、でももう顔のどこにも力が入らない、、、

「わたし、学校なんて入らない。ホテルを探してただけだから。あんまり疲れてここに座っちゃってるけど、ただそれだけだから。とにかく、、、怒ってるんだから!」

不機嫌度160%、でも、まぬけなことにそれはもちろん日本語(笑)。もうね、通じる通じないとか、そういうのどうでもよくなっちゃってるのね。

靴のままソファーに胡坐をかき、その男性をじっと見る。
・・・まだ続いてる・・・英語の説明なんて耳にはいらない。
ここにきて集中力がぷつりときれたようでした。

無表情で黙ってしまった私にしびれを切らしたのか、


「デビ!デビ!ちょっと来てくれ。」


笑い顔の男性はデビを呼ぶ・・・ん?、、、って誰だいそりゃ?




終わりの始まり⑦へつづく。。。



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