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終わりの始まり② [記憶のカケラ。]

さて、早朝グァテマラ国際空港に降り立ったモモキチは、「国際」空港のあまりの規模の小ささに驚きつつも、入国の際「滞在許可日数」の交渉をすることになりました。

「90日、だめなら60日ちょうだい。」

モモキチがあいかわらずふてぶてしくそう言うと、係員はじぃっとこちらを凝視していましたが、やがてだまって「30」という数字のはんこをモモキチのパスポートに押すと、ニヤリ、と不敵に笑いやがりました。

ちっ、、、だめだったか。

英語もスペイン語も話せないんじゃ、ま、こんなもんかな。

もともとその辺は個人の判断に任せられているらしく、「運が良ければ」60日の許可がもらえるという話はガイドブックを読んで知っていたので「ま、いいや、移民局でなんとかしよう。」とおとなしくそこを離れました。

両替所も開いていない時間帯だったので、ひとまずバックパックを床におろし、ペンキが剥げかかった手すりにもたれて、ほぅ、と一息つきました。

目的もなく、行先も決めず、宿もない。

これからどうすんだ?

と、無計画な自分が心の底からおかしくなって、いつの間にか声をあげて笑っていました。行くところなんてないのに、言葉もわからないのに、下手したら帰り道すらわからない(笑)。

ほんと、おかしくって。

声をあげてわらったのなんて、どのくらいぶりだろう?

人間はね、本当に困ったときは笑うの。ふふふ。

「・・・なんだ、わたし、もう笑えるじゃん。」

そう思うともっとおかしくなって、通りすがりに変な目で見られながらも笑わずにいられませんでした。




「終わりの始まり③」へつづく。


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終わりの始まり① [記憶のカケラ。]

22歳。昔、昔、まだ目に映る世界がモノトーンだったころ

モモキチは旅に出ました。行先はグァテマラ。

といっても、旅の記録である数百枚の写真もネガも
そのすべてを処分したので
残るは記憶のカケラだけ。

だから断片をこうして少しずつ、集めてみようかなと思って。


・・・
飛行機なんて乗ったこともなかった私がなんで突然グァテマラに行こうと思ったのか・・・

正直どこでもよかったのです。
ただ日本から逃げる必要があったとしか、今は・・・告白できません。


安いグァテマラ行のチケットは何度も乗り継いで、到着に40時間を要するものだった気がします。


当時アメリカに住んでいる友人が、

「乗り継ぎの心得」

を教えてくれましたが、これがなければ韓国の空港で、すでに挫折していたと思います。


「最後まで出発ゲートが変わるから、アナウンスを絶対に聞くように」


耳にタコができるほどそれを繰り返されていたおかげで、韓国KIMPO空港ゲートの待合席で、ゲート変更を告げる英語のアナウンスをやっと聞き取ることができました。かろうじて聞き取った番号のゲートに急いで移動して、まずは一安心。


次の乗り継ぎはロサンゼルス空港。

お腹が空いたのでとりあえずチョコバーとお水を買って
もぐもぐしながら空港内を眺め回していると、

「〇×△~!▲▽!!!」

と、白人女性がまっすぐこちらに向かってきます。

おお?なんだなんだと思っていると、どうやら私の体中の内出血をひとつひとつ確認しているような・・・。

「あー、これはね、違うの。バイクで事故ったの」

確かに出発の4~5日前、原付に乗っていた私は普通自動車と衝突事故を起こし、救急車で運ばれていたようなしだいでして・・・。膝丈のカーゴパンツからにょきっと出ている生身の部分は何か所も広範囲にわたり全体が赤黒くはれていました。

「はさまれたからなぁ・・・」

なんてことをぼんやり考えていると、その女性は・・・え?ぽ、ぽりす?

「ちがうちがう、児童虐待じゃないから!」

慌てて私は交通事故だといって、なんとか彼女をなだめ、その場を後にしました。

・・・さすがU.S.A.。日本とは違う反応だわ。

それにしても・・・どこに行っても日本人の一人や二人いると思っていたのに、これまでそれらしき人種はひとりも見かけませんでした。これほど長い時間日本人以外ばかり見ているというのも、もちろん初めてな訳でして。

さて、次は・・・と。

ここかな?と適当に狙いを定めて、カウンターでチケットを見せると・・・なんかすごい剣幕でまくしたてられてるんだけど。

英語なんてちっともわからん。


「チケットはあるんだから、とりあえず乗せて。」


とモモキチは日本語でふてぶてしく言いましたが、白い肌のその人に通じるはずもなく、真剣に何かを伝えようとしているようでした。

ま、要は私の持っている往復チケットが2か月半のものだったから(後日このチケットも捨てることになるんだけど)、グァテマラの滞在許可(60日)を超えているためイミグレーションに行かないとたいへんややこしいことになるぞ・・・と。


「いいからいいから。あっちでなんとかするから、乗せてよ。」


やさぐれた口調でももきちは食い下がります。

もうこいつは何を言ってもだめだ、、、という顔で、長らくの押し問答の末ゲートの中に入れてくれました。


さて、ゲートの中に入っても待ち時間は4時間・・・いや6時間?今のうちに体をのばして寝ておこうと思って、ガラガラに空いているベンチにバックパックを寝かせ、その上に覆いかぶさってグーグー寝てしまいました。

搭乗、離陸して、いったんメキシコ空港に降りたような気もするけれど、そこからの記憶はあいまいで、次の記憶はグァテマラ空港から。



「終わりの始まり②」へつづく。。。










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